第15回全国夕陽サミットin北海道千歳
北国の夕陽が誘う天空街道
夕陽と語らいの宿ネットワーク(岸本一郎会長)主催の「第15回全国夕陽サミットin北海道・千歳」が9月24日、千歳市支笏湖温泉の休暇村支笏湖で開かれました。サミットはネットワーク会員施設が所在する地域で毎年開催しているもので、北海道では初めてになります。今年は「北国の夕陽が誘う天空街道」をテーマにシンポジウム、夕陽観賞パーティーを行いました。新千歳空港をハブに道内の夕陽スポットをつなぐ街道の構築に向け、地域づくりなどについて50人の参加者とともに話し合いました。
北海道千歳市・支笏湖の船上から望む夕景
基調講演 観光資源としての夕陽
記念講演は、札幌大谷大学社会学部教授の森雅人さんが「観光資源としての夕陽」と題し話しました。
森さんは「海に沈む夕陽は海上他界を象徴しており、ストーリー性が高い」として、西方浄土の宗教観や海から漂着した鯨をえびす様に見立てた日本人の精神文化を色濃く反映したものだと紹介。「夕陽を中心に信仰や祭り、食文化が育まれました」と話しました。
また、蝦夷地を「北海道」と名づけた幕末の探検家、松浦武四郎が道内各地を訪れた際に、夕陽をテーマに多数の歌を残していたことを紹介。天塩町や石狩市などにはそうした歌碑や武四郎に関連する碑が立っていることから「夕陽に迫る武四郎の気持ちになった歌碑めぐり」が可能だとも語り、北海道が命名されてから来年2018年に150年目になるチャンスを生かすべきだとも言及しました。
その中で、森さんは「篠屋(漁師小屋)越しに見たり、奇岩怪石を照らす夕陽の景勝的な魅力はもちろん、夕陽を愛でる地域の人たちの存在が欠かせません」と、夕陽の魅力を高める人材育成の必要性を強調しました。加えて「土着的な信仰や地域性を意識しながら文化的に夕陽を捉え物語性の高いツアーに仕立て、さらに地場産業と結びついた特産品を地域の人たちでアイデアを出しながら創っていくことが重要です」とし、夕陽をテーマにした商品開発の観点を伝えました。
パネルディスカッション 夕陽と暮らし―物語を"売る"
パパネルディスカッションは休暇村支笏湖の川崎孝利支配人、長沼町観光協会の小笠原聡副会長、増毛町観光協会の林眞二会長、八雲町熊石総合支所産業課の田村春夫課長、積丹町商工観光課の山崎英幸課長、森教授の6人がパネリスト。
川崎さんは「旅館組合で朝のお散歩会を有料でやっています。燃えるような支笏湖の夕陽をメーンに夕方版をやり、お客様同士の交流につなげたいと思っています」。
小笠原さんは「馬追(まおい)丘陵から地平線に沈む夕陽が見られることから、年に5回夕焼け市を開催しています。周辺から夕陽を目的に訪れてもらえるようにしていきたいですね」。
林さんは「40キロぐらいの海岸線に国道231号線が走り、ほとんどのところから夕陽を眺められます。東京生まれの私が増毛に来て20年。お客様をおもてなしするためにいろんなことをやってきました。地域の課題はそこから見つけられるのではないでしょうか」。
田村さんは「日本で唯一、太平洋と日本海に面したまちで、秋が一番夕陽のきれいな時期です。ただ、きれいなだけでは次につながりません。北海道最北の番所があることや円空上人など、まちの歴史と夕陽を結ぶストーリーを考えたい」。
夕陽を生かした各地の取り組みと今後の課題を議論
山崎さんは「エメラルドグリーンの海を"積丹ブルー"として全国発信しています。神威岬の夕陽は、小樽発のフェリーとのコントラストが鮮やかです。来年、余市まで高速道がつながります。国産のジンを作る取り組みも進んでおり、クラフト的な希少価値のある積丹ならではのものにしていきたい」。
夕陽評論家としてコメンテーターを務めた油井昌由樹さんは、世界70カ所の夕陽の名所を訪ねた経験から「実は、そこに住んでいる人たちの日常生活が観光に来た人の琴線に触れ、暮らしを見せることが一番ひかれるんです。土着の、そこに暮らしている人にスポットを当てて魅力にすることが大切です。それはすぐに答えは出ません。5年や10年かかるものだと認識してほしいですね」と指摘しました。
森さんも「暮らしを見せることは私も共感します。特産品はまさに暮らしですが、どうしても単価が高くなります。イベントでは売れますが、自治体や企業が連携し恒常的に売れるように商品開発、流通経路を安定させていきたいですね」。
夕陽観賞パーティー 支笏湖染める赤の夕景の美
夕陽観賞パーティーは、支笏湖観光船の水中遊覧船エメラルド船上で行われました。バイオリニストの浜島泰子さんの演奏を湖上で聞きながら、支笏湖の湖面と雲を赤く染める夕景をたん能しました。
参加者がまず驚いたのが水中の窓から見る支笏湖の美しさと魚影の濃さ。環境省の調査で9年連続水質日本一に選ばれていることに納得する透明度でした。加えてウグイなどの魚が何匹も泳いでいる姿にも歓声があがりました。
船は夕景が美しく見える沖合へ移動。支笏湖が特異な形をした樽前山や恵庭岳などに囲まれたカルデラ湖と実感し、山の合間に沈みゆく夕陽を浜島さんが奏でるやさしい音色とともに見送りました。
バイオリンの演奏を披露する浜島さん
次回第16回開催地 瀬戸内海洋上で会いましょう
記念講演とパネルディスカッションを踏まえ、千歳観光連盟の佐々木香澄さんが「千歳宣言」を読み上げ、満場一致で採択されました。次回の全国夕陽サミットの開催が決まったサンスタークルーズの野瀬和宏社長は「来年は、日本と韓国を結ぶフェリーから瀬戸内海に沈む夕陽を観賞しましょう」と話し、再会を呼びかけました。