第17回全国夕陽サミットin和歌山・南紀勝浦温泉
南紀12湯と夕陽で「よみがえりの国・和歌山」
第17回全国夕陽サミットin和歌山・南紀勝浦温泉が、夕陽の日の9月23日、和歌山県那智勝浦町・南紀勝浦温泉のホテル浦島で開催されました。サミットは、客室や館内から夕陽の眺望が自慢の旅館ホテルなどで組織する夕陽と語らいの宿ネットワークが毎年、会員が所在する市町村で開催しています。今年は、良質な温泉を多数有し夕陽の名所が点在する和歌山県の特色を前面に「南紀12湯と夕陽〜温泉と夕陽の魅力、和歌山へ〜」をテーマにシンポジウムを開催したほか、ホテル浦島内の狼煙山遊園で聖地熊野へ沈む夕陽の観賞会を実施しました。
ホテル浦島の狼煙山遊園展望台から望む夕陽。
龍形の雲を供にして聖地・熊野へ沈んでいく
基調講演 観光戦略を立て連携を
第17回全国夕陽サミットは、夕陽と語らいの宿ネットワークの岸本一郎会長に続き、地元から那智勝浦観光協会副会長で那智勝浦町の矢熊義人副町長、和歌山県観光局の中島寛和局長が次のようにあいさつしました。
矢熊さんは「熊野三山に沈む美しい夕陽と、ホテル浦島の名物・忘帰洞から見る朝日をぜひ見てください」と呼びかけ、中島さんは「和歌山県では20年前に県内の朝日・夕陽100選をやりました。和歌山の夕陽、朝日の素晴らしさを多くの人に知っていただきたい」と話し、今サミットを機に県内の夕陽をさらに売り出していく意向を示しました。
基調講演は、徳島県や堺市などで地域振興に尽力した観光コンサルタントの岩井敏久さんによる「南紀12湯と夕陽の魅力」。
岩井さんは、JTBの和歌山支店長だった当時に開かれた「南紀熊野体験博」で熊野地域の旅館を売り出すことになったそうです。「名古屋市内のイベントでPRしたのですが、熊野の宿だけではインパクトがない。そこで旅行会社5社と地域が連携し『熊野七湯』として売り出したのです」。その構想の延長が南紀12湯で、岩井さんは「観光はネーミングやキャッチコピーが大切」と強調しました。
また、ある温泉地で露天風呂に落ち葉や虫が浮き、苦情になっていました。「虫も落ち葉も入りたがる温泉ですとうたい、苦情がなくなりました」と話し、発想を転換し苦情を次の観光戦略につなげようと呼びかけました。
南紀12湯と夕陽については「夕陽スポットも12カ所を選定し、温泉と夕陽のカレンダーを作成してはどうでしょうか。毎月、南紀の温泉に入り夕陽に『ありがとう』と感謝を伝える、そんな戦略を立てたいと考えています。お互いの夕陽を売り出し、連携してお値打ち感のある料金を打ち出し威力あるキャッチコピーを考えたい」と話しました。
パネルディスカッション 物語をつくり12の温泉で人を呼ぶ
パネルディスカッションは「和歌山県の温泉と夕陽の魅力」と題し、県内温泉地の皆さんらで話し合いました。
パネリストは、基調講演に続き岩井さん、夕陽評論家で俳優の油井昌由樹さん、南紀白浜温泉・ホテルシーモアの古川涇二さん、加太淡島温泉・大阪屋ひいなの湯の利光伸彦さん、南紀勝浦温泉・ホテル浦島の寺前俊二さん。コーディネーターは夕陽と語らいの宿ネットワークの奥坊一広理事が務めました。
南紀12湯と夕陽を組み合わせ、和歌山の観光の売り物にしよう
と話し合ったパネルディスカッション
油井さんは「月は必ず満月になり、毎月イベントができます。夕陽を愛でるところは月もきれいですが、夕陽と月の違いはシルエット。そのシルエットに物語があります。物語の質を大切にして、宿泊につながる夕陽・夕月で売り出そう」。
古川さんは「いま和歌山は世界から注目されています。著名なガイドブック、ロンリープラネットで高野山や熊野が目的地として取り上げられており、欧米豪の方々が歩いています。次は温泉です。和歌山の温泉も世界デビューです」。
寺前さんは「熊野古道と同じく世界遺産に選ばれているスペインのサンチャゴ巡礼道は、スペインの西の果てに行き、夕陽を見て古い自分を捨て、新しい自分に生まれ変わるそうです。熊野もよみがえりの地と言われています。夕陽はどこでも見られますが、夕陽を見るまでのプロセスが大事。熊野はスピリチュアルな夕陽なのです」。
利光さんは「和歌山県は観光に力を入れていますが、お客さんに伝わりにくいコピーが多く、改めて観光のど真ん中に温泉を持ってきたいと考えています。他地区の温泉を宣伝し合うことで県内観光地を活性化できるのではないでしょうか」。利光さんは和歌山市内の温泉を売り出そうと「わスパ」を立ち上げた経験なども踏まえて、一つの泉源を複数施設で利用していることを条件に▽加太(和歌山市)▽わかやま(同)▽龍神(田辺市)▽湯の峰(同)▽渡瀬(同)▽川湯(同)▽みなべ(みなべ町)▽白浜・椿(白浜町)▽すさみ(すさみ町)▽串本(串本町)▽太地(太地町)▽南紀勝浦(那智勝浦町)▽湯川(同)を「南紀12湯」とする試案を発表しました。
岩井さんは「月曜から日曜日という1週間の流れを熊野七湯の戦略にしました。月曜は月、火曜は火、水曜は水...と観光資源を洗い出し組み合わせることで物語を生じさせました。神々から与えられた温泉、夕陽を物語化し売り出していくべきです」と話しました。
"龍"を従え聖地熊野に沈む― ホテル浦島で夕陽観賞会
夕陽サミット終了後、ホテル浦島の敷地内にある狼煙山遊園で夕陽観賞会を開催しました。
狼煙山遊園は吉野熊野国立公園内にあり、漁師の見張り番が鯨や、熊野灘を航行する黒船を発見した時、のろしを上げて急を告げたことから名前がつけられたと言われています。海抜約80メートルの展望台からは熊野の山々、那智の滝、勝浦の町並み、紀の松原と太平洋の360度の大パノラマが広がります。
狼煙山の突端は荒々しい海岸
また、緑豊かな自然に囲まれた園内は遊歩道が整備されており、パワースポットとして知られる浦島稲荷神社、1886年(明治19年)10月、勝浦沖で沈没した英国の貨物船ノルマントン号の遭難碑などがあります。
この日は天気に恵まれ鮮やかな夕陽を見ることができました。展望台からは、熊野の山並みへ沈みゆく夕陽とともに、飛行機雲が偶然にも竜の形になって夕陽を追いかけるように見え、観賞していた皆さんから驚嘆の声があがっていました。
ホテル浦島の狼煙山遊園・展望台から
夕陽を眺める観賞会に参加した皆さん
次回第18回開催地 新潟県湯田上温泉で会いましょう
基調講演、パネルディスカッションを踏まえて、南紀勝浦温泉旅館組合の中平理咲さんが平安時代の装束でサミット宣言文を読み上げ全員で採択しました。
最後に、夕陽と語らいの宿ネットワークの小松原正貴副会長が「新潟平野に沈む世界に一つだけの夕陽を見に来てください」と、来年開催する第18回サミットの参加を呼びかけました。
宣言文を読む中平さん