第13回全国夕陽サミットin兵庫県淡路島
国生みの夕陽―朱色に染まる神様からの贈り物
夕陽と語らいの宿ネットワーク(岸本一郎会長)主催の「第13回全国夕陽サミットin淡路島」が5月10日、兵庫県南あわじ市のホテルニューアワジ・プラザ淡路島で開かれました。サミットはネットワーク会員施設が所在する地域で毎年開催しているもので、今年は「国生みの夕陽―朱色に染まる神様からの贈り物」がテーマ。シンポジウムや夕陽観賞パーティーなど多彩な内容で、大鳴門橋越しに夕陽が沈むまで行われました。約80人が参加しました。
ホテルニューアワジ・プラザ淡路島から
大鳴門橋越しに沈みゆく夕陽
基調講演 逆転の発想で夕陽PR
基調講演は、井門観光研究所の井門隆夫さんが「夕陽は明日の朝日に続く!旅館・地域の未来像」と題し話しました。
大学で教員も務める井門さんは、学生に「朝日と夕陽とどっちが好きか?」と尋ね、その結果を「7割が夕陽と答えました」と紹介しました。理由は「明日もがんばろうとリセットできるから」「ロマンチック」などで、井門さんは「夕陽の方が饒舌なんです」。
これだけ夕陽が好きなのに、若者が旅をしないのはなぜなのか。そのカギを井門さんは「夜」の観光に見い出します。長崎県佐世保市で行われている「佐世保ナイトツアー」。市内を30分案内して、外国人バーに連れて行くだけですが、米軍基地がある佐世保ならではの体験だと言えます。高知市の旅館、城西館は2次会向けの「お座敷遊びツアー」を実施し人気を呼んでいます。
「なにもないと部屋にこもってテレビを見るだけ」のお客さんを連れだす。井門さんは「放っておいてはダメ。お客さんはお金を払ってくれます」とし、逆転の発想が大切だと話しました。
その逆転の発想こそ、今もっとも大切だと井門さんは説きます。佐世保の九十九島を売り出そうとコピーを考えてみると、地元の人は「夕陽がきれいなんです、来てもらえれば分かります」といった自分たちが伝えたいことをそのままコピーにしてしまうそうです。「来てもらいたい人に、来たら分かりますはないでしょう。逆に、東京の人が作ったコピーは『島った、ハマった』です」と紹介しました。
さらに佐賀市のプロモーション動画を会場に流しました。動画は、有明海の珍魚ワラスボを「WRSB」として未知の生物ととらえ、パニック映画風にし自然と引き込まれる内容です。井門さんは「PRとは逆転の発想から生まれるものです。夕陽から始まる新しい日々を逆転の発想からスタートさせましょう」と呼びかけました。
「朝日より夕陽の方が饒舌」と話す
井門さん
パネルディスカッション 「夕陽の道」をつくろう
パネルディスカッションは「国生みと御食国で見る夕陽~夕陽は神様の贈り物」と題し、国生み神話に登場する淡路島はもちろん、三重県の伊勢志摩、島根県の出雲からもパネリストにご登壇いただきました。
「ひのわかみや」の故事から夕陽の神様を祀っているという伊弉諾神宮宮司の本名孝至さんは、伊弉諾神宮の位置関係を「真東に伊勢の神宮、夏至の日には信州の諏訪大社から日が昇り、出雲大社に沈みます。冬至は熊野那智大社から昇り、宮崎県の高千穂へと至ります」と話し「太陽の道」を紹介しました。現在取り組まれている出雲、高千穂と連携した「神話のトライアングル」について「夕陽のつながりを深める動きでもあります」と話しました。
淡路島特産の瓦に魅入られ淡路島に移住した山田脩二さんは「光で紙を焼くカメラマンから、国生みの土を焼くカワラマンに転身しました」と自己紹介。「国生みの島の土は、まさに原土なんです。淡路島は単なる産地だけではないんです」「単に夕陽がきれいで写真だけ撮って帰るのはどうか。連続した時間で、集落の暮らしとともに見るのが大事なんです」などと話しました。
島根県松江市在住で、まちづくり観光研究所主任研究員の門脇修二さんは世界的な旅行ガイドブックのブルーガイドで島根県から松江、出雲、隠岐が3つ星に選ばれ「3カ所とも夕陽のスポットです」。隠岐のローソク島の夕陽は感動の度合いが高く、宍道湖で夕陽を見る観光客も増えているとし「改めて夕陽が注目されています」。
夕陽と語らいの宿ネットワーク会員で三重県志摩のシーサイドホテル鯨望荘の岩崎充宏さんは「伊勢の神様は天照大御神、豊受大御神など女性の神様ばかりです。2千年続く海女文化も女性が担い手。一昨年の神宮式年遷宮も若い女性がたいへん多かった」と女性の力で地域がけん引されていると話しました。
「太陽の道」に続く21世紀の新しい巡礼道「夕陽の道」
が提案されたパネルディスカッション
夕陽と語らいの宿ネットワーク顧問で夕陽評論家の油井昌由樹さんは「日本は日出国で、外国はすべて夕陽の方向です。世界の人に、自国の方向に沈む夕陽を案内できます」。
井門さんは「海外でサンセットクルーズは当たり前ですが、日本はたいへん少ない。夕陽をクローズアップして商品化することを考えましょう」と呼びかけました。
最後に本名さんが「地域の古いお社と夕陽をつなげ、理屈はそれぞれの地域で八百万の神でつけていく」などと、夕陽で連携し「夕陽の道」を構築していく可能性を示しました。
最後に、パネルディスカッションを踏まえた「淡路島宣言」をクイーン淡路第28代の佐々木理沙さんと第34代の平川恵里佳さんが読み上げ、参加者全員で採択しました。
夕陽観賞パーティー 大鳴門橋越しに見送る
シンポジウム終了後、会場を移して夕陽観賞パーティーを行いました。参加者の多くが観賞パーティーに残り、目前の瀬戸内海を黄金色に照らしながら大鳴門橋越しに沈んでいったこの日の夕陽を見送りました。
夕陽を眺める参加者の皆さん
パーティーは、夕陽と語らいの地域大賞の発表、画家の大西幸仁(太陽)さんによる「夕陽アートライブ」、シンガーソングライターのSarasaさんによる「夕陽コンサート」などが行われました。地元、南あわじ市の川野四朗副市長が歓迎のあいさつをし、美しく姿をみせてくれた夕陽に向かって全員で乾杯しました。
大西さんのライブは、夕陽からパワーとインスピレーションを得て描きます。Sarasaさんがこの日のために書き下ろした「国生み神話~イザナギとイザナミ」のピアノの弾き語りに合わせて、絵筆を使わず夕陽が即興で表れていきます。
この日描かれた夕陽の絵は、ホテルニューアワジプラザ淡路島の夕映えギャラリーに展示されています。
大西さんの作品と記念撮影
参加者には夕陽をイメージしたカクテルや淡路島の幸を使ったオードブルなどが振る舞われました。途中、淡路島名物の浄瑠璃人形も参加、記念撮影を楽しむ姿も見受けられました。5月と8月にしか見られない大鳴門橋越しに沈む夕陽を全員で見送り、地元の俳句愛好家の皆さんが詠んだ一句を披露したことも会場を盛り上げました。
「海峡は夕日のるつぼ夏はじめ」 香南
「祈りてはまた描きあげる夏の海」 仁美子